区民の皆様への医療情報

平成20年6月 子供メタボリックシンドロームの診断について

最近よく話題になるメタボリックシンドローム。中年期以降の大人だけの病気だと思っていませんか?意外に思われるでしょうが、小児の頃から注意が必要なのです。

メタボリックシンドロームは飽食とストレスと運動不足による過栄養を原因とした内臓脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性耐糖能異常、動脈硬化惹起性リポ蛋白異常、血圧高値など、動脈硬化の危険因子が個人に合併するマルチプルリスクファクター症候群で、心血管病を発症しやすい状態です。 メタボリックシンドロームは心血管病予防の観点から世界的に注目されています。

マルチプルリスクファクター症候群を構成する要素のうち、内臓脂肪(腹腔内脂肪)が多彩な病態の発症を規定することが明らかになっております。

このことからメタボリックシンドロームは複数のリファクターが偶然に集まったのではないと考えられています。現在の解釈は上流に内臓脂肪蓄積を共通の発症基盤に持つ、ひとつの疾病単位として捉えられています。

この様なことが小児の頃から発症するということで、小児メタボリックシンドロームの診断基準(6才~15才)が昨年の3月に厚生労働省研究班から発表されました。これは将来発症するかもしれない心血管イベントを小児のうちから生活習慣病の小さな芽を発見し防ぐことを目標としております。

中年男性では、予備群を含むと二人に一人がメタボリックシンドロームといわれております。

小児の肥満はこの30年間で約3倍と増加しております。この肥満児の4割に動脈硬化性疾患と直接関連深いLDLコレステロールの上昇が認められております。

高血圧症の頻度は小中学生では0.1%~1%、高校生では3%とされております。また以前の小児の糖尿病は当然Ⅰ型糖尿病が主体でしたが、10数年前からは生活習慣型であるⅡ型糖尿病が増えております。これらは、食べすぎと運動不足を背景として発生しております。 治療好機である軽症例においても「子供だから」という考えでしっかり対処できていない事が原因と思われます。私達小児科医もこれからは積極的に参加していかなければと思っております。

そこで私達が一番身近に注目したのは、肥満度がアップしている子供の腹囲測定を今年の検診から実施しようと思っております。すなわち腹囲/身長が0.5以上であればメタボリックシンドロームの基準を満たし又小学生は腹囲が75cm以上、中学生では80cm以上としております。

このような子供達には学校から連絡してもらい、まず親と相談し子供は将来が長いゆえに最初がとても重要でこのメタボリックシンドロームの怖さや厳格な治療の意義をよく話をして理解してもらい、目に見える治療目標や計測器などを使用し子供の関心を引き出し自己管理をさせる事だと思います。

血液検査では、中性脂肪が120mg/dl以上。または、HDLコレステロール40mg/dl以下。血圧は125/70以上。空腹時血糖が100mg/dl以上。
この項目の2つ以上が診断基準となっております。

小児メタボリックシンドロームに関して大人になってから心血管イベントに対してどの程度のリスクになっているのかという疑問もありますが、残念ながら世界的に見ても両者を明確に関連づけるエビデンスは乏しいのが現状です。

Bogalusa Heart study などいくつかの研究で小児期のメタボリックシンドロームと30才代の若年成人の頚動脈中膜肥厚との関連が報告されております。また、最近米国より小児期のメタボリックシンドロームが25年後の心血管イベント予測因子となるという報告もあります。

日本では残念ながらデータ不足ですが、内臓肥満やメタボリックシンドロームが動脈硬化の明確なリスクということは理解できているので、発症した児童に対する介入だけではなく、現在は予備群であっても将来、メタボリックシンドロームになりそうな層を見つけ出し、より早めに介入することも小児科医学校医の仕事になってくるでしょう。

医療を川の流れにたとえるならば、小児科医は川上で介入し子供が生活習慣病を予防する知識を持てる様に学校保健教育などに協力する事もとても大切だと思っております。

小児期はその子供の一生の人生の健康設計の基礎を作る時期でこの事を念頭においてご両親に理解してもらいチームで取り組んで行くことが大切だと思います

(神田医師会 加賀 一兄)

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