平成20年3月 腰痛症も生活習慣病のひとつ
誰もが一生に数回は経験する腰の痛み。治りやすいが、ぶり返しやすい。腰痛持ちの方はイライラして気分も塞ぎがちになります。しかし、腰痛の真の原因は職場環境や日常の生活習慣にひそんでいるのです。
からだの使い方のコツをつかめば、腰への負担を減らし痛みを軽くすることができます。つまり、腰の痛みとうまく付き合っていくのが肝心です。
あるアンケートでは約80%以上の人が「腰痛を経験したことがある」と回答していますし、いわゆる「腰痛持ち」の人が約30%弱もいました。しかも、65歳以上のからだの悩みで最も多いのが腰痛です。
けれど、急な腰痛の約85%~90%は3日から1週間が痛みのピークで、あとは3週間から長くても3ヶ月以内で、動いた瞬間の痛みや弱い痛みが徐々に消えていきますから安心してください。はっきりいって約半数は放っといても治ります。
いったんは治ったと思う腰痛も再発率は高く、別のアンケートでは、「時々痛くなる」が約50~60%も。さらに、約1~2割の人が慢性化して、3ヶ月以上たっても「今も痛みが残っている」と答えています。
急性腰椎症(ぎっくり腰)の多くは日常的な動作がきっかけ(誘因)になります。たとえば、中腰(22.2%)・屈んだとき(13.8%)・最も頻度が多いのは重量物の挙上(43.5%)です。または、急に姿勢を変えた時・立ち続け。
常に腰によくない姿勢で続ける仕事も腰痛の誘因になります。やはり、重量物の扱いや繰り返し中腰で扱う作業。または、かがみっぱなしで腰を伸ばせない作業や座りっぱなしのデスクワークなど。
ある報告では、腰痛で外来に来られる患者さんは筋靭帯性腰痛症59.9%がもっとも多く、腰椎椎間関節症13.6%と合せて、いわゆる肉離れや捻挫もしくは疲労性の炎症が7割以上にあたります。
なあんだほとんどがただの筋肉痛か、と思ってはいけません。お尻からあしにかけて痛みやしびれが走る(下肢痛)場合や、どんな姿勢でも痛い、だんだんひどくなる、麻痺を伴うもの、発熱を伴うもの。つまり、神経の圧迫・骨折・腫瘍・化膿性炎症など病的な腰痛です。ですから一度は整形外科医師の診断を受けてください、念のため。
さて、通常の腰痛ならば、痛みが強いのは始めの2~3日から1週間です。ここをどうしのぐかです。湿布や内服で鎮痛剤をしっかり使いましょう。数日ならば副作用の心配は少なくてすみます。
処方どうりに1日2~3回飲んで、痛みが軽くなってきたら湿布だけ(貼りすぎに注意、かぶれます。)か、痛いときだけ飲むように減らしてください。
安静は、腰だけかばうようにすれば、動ける範囲で動いてもけっこうです。むしろ、じっとしているほうがいたいことが多いものです。局所(腰)だけひねったり、反らしすぎたりしないようにしてください。
コルセットなどで固定するのも有効です。または楽な格好でリラックスするようにしてください。
腰痛発症から2~3週間は、日常生活ではあまり痛みがなくなります。しかしこの時期はまだ治りきっていないため、ちょっとしたことで痛みがぶり返します。
寒冷・天候不順、腰に負担のかかる姿勢(特にかがんだり、ひねったり、物を持ち上げたり)を避けましょう。早い動作や疲れも大敵です。あわてず、動作の前に腰を意識して一拍間合いをいれてください。
腰痛は生活習慣病。自分の腰痛対処法(休憩時間・場所・姿勢など)を知り、回復期で示したような日常生活の注意を徹底し、腰痛再発予防を目指して、自分で生活管理をするのが大切です。是非職場でも工夫をしてみてください。
最後にひとつ、最近は働きすぎの慢性疲労症候群(うつ病など)がクローズアップされていますが、実は腰痛もその警告信号のひとつです(肩こりなども)。
腰痛でいらっしゃった患者さんの話をよくきいてみると、腰が痛くなる約1ヶ月前が非常に仕事が忙しかったり、人事異動でストレスがたまっていたり、睡眠不足の方が多い。疲労を貯めないようにしましょう。限界は突然やってきます。よく働く人はよーく休んでください。
(神田医師会 小塙 幸司)