平成19年2月 大腸内視鏡のすすめ大腸ポリープに注意
ポリープとは臓器の内腔に突出した隆起物です。一般的にポリープというと、多くの方は癌に近いものを想像するかも知れませんが、けっしてそうではありません。 癌とは関係のない炎症に伴って発生するものから、完全に悪性のものまで種々にあります。検診でポリープが見つかり大騒ぎする人が時にいますが、大切なことはポリープは癌と同義ではないのです。
ただ、大腸ではポリープは頻度は高く、癌化の可能性のある腺腫をしめすことが多いため注意が必要です。
大腸ポリープは一般的に無症状のことが多いです。最近は大腸癌検診で便潜血検査が普及しているので、潜血反応陽性で大腸内視鏡検査をうけて偶然発見される人が増えてきています。
ただ大きなポリープは下血・腹痛・便通異常の原因になりますので、とくに年輩の人でこのような症状が持続するような場合は速めに検査をうけた方がよいでしょう。
大腸のポリープにはいくつかの種類があります。ただし、一般的に大腸に見つかるポリープは、腫瘍性のポリープで腺腫といわれるものと、腫瘍でない体に害のない過形成ポリープに二分されます。
大腸腺腫は大腸の粘膜が腫瘍性に増殖したもので、大腸ポリープの約8割を占めています。腺腫は発赤調で隆起したものや扁平または陥凹したものがあり、大きくなると癌化することがあるため、内視鏡検査で腺腫を認めた場合は原則的にポリープを切除してしまいます。
腺腫は年齢が高くなるほど、発生頻度は高くなり、大きい腺腫が多発する人は癌の発生頻度が高いことが知られています。一方、過形成ポリープは白色調の扁平な小ポリープであることが多く、肛門の近くに好発する傾向があります。その他に、潰瘍性大腸炎やクローン病といった大腸に炎症をおこす病気に一過性に発生する炎症性ポリープ、若年者にみられる若年性ポリープなどがあります。
大腸腺腫は、大きくなるほど癌の割合が増加します。例えば一般的なポリープでは5-9mm位の大きさでは約2%しか癌がないのに、20mm大になると約半数が癌となります。ですから、小さいうちに大腸の内視鏡検査で発見して切除しておかなければならないのです。
大腸腺腫は、これまで隆起型といって内腔に突出したものしか発見されませんでした。ところがこの約15年位の間に、日本では大腸の内視鏡検査が発達し、平坦なものや陥凹した腺腫が発見されるようになってきました。陥凹型は10mmを超えると7割が癌となる怖い腫瘍ですが、陥凹型自体が全腫瘍のなかで約2~3%しかないため、必要以上に怖れることはありません。
大腸ポリープの検査は肛門からバリウムと空気を入れて撮影する注腸検査と、肛門から内視鏡を挿入する大腸内視鏡検査があります。大腸ポリープとくに腺腫の多くが無症状であることを考えると、40歳以上の方であれば一度はどちらかの検査をうけた方がよいでしょう。
では注腸検査と大腸内視鏡検査はどちらが楽で的確なのでし ょう。注腸検査は比較的簡便な検査ですが、処置はできませんし、撮影後の写真からの確実な読影力が要求されます。一方、大腸内視鏡検査は時に痛みを訴える方がいて、術者にある程度の熟練が要求されますが、ポリープを発見した場合その場で処置できるという最大の利点があります。
現在では、大腸内視鏡検査を専門的におこなう施設が多く、できれば内視鏡検査の方がお勧めでしょう。とくに、数年内視鏡機器は飛躍的に進歩しており、100倍まで拡大して診断可能な拡大内視鏡や、腫瘍表面の毛細血管像を強調して診断に役立てるNBIシステムというシステムを搭載した内視鏡なども普及してきております。
大腸ポリープは、内視鏡機器と処置具の発達により、内視鏡による治療が進歩してきました。専門医であれば、浸潤した癌でなければ内視鏡で5cm位のものでも切除可能です。それ以上の大きいポリープでも腹腔鏡という腹壁の外から硬い内視鏡を入れて手術する方法が普及してきています。内視鏡治療に関する機器や手技も非常に進歩しております。
大腸ポリープは、大腸癌の発生と密接な関係にあり、最近の内視鏡検査の普及とともに発見される頻度も多くなってきています。しかし、一般的に見つかるポリープは10mmに満たない良性のものが多く、必要以上に過敏になる必要はありません。大腸の検査だからといって厭がらずに一度は検査されることが大切です。
(神田医師会 寺井 毅)