区民の皆様への医療情報

平成18年6月 「脳の病気について」

皆様の身近で次のような事があるのではないでしょうか。身内、肉親などに何らかの障害、例えば歩けなくなったり、半身不随になったり、その後寝たきりになり、認知症(分り易くいえばこれまでの痴呆症)で介護に憂慮しているなど。これらにつき何が原因で起きたのか、またどう対処したらいいのかなどにつき神経内科医としてこれまでの経験から述べさせて頂きます。

まず頭の病気は分りやすく分類しますと以下の様になります。

1.頭の動脈(きれいな血液が流れています)に異常を来たし、動脈硬化が原因となり、脳梗塞(動脈がつまる事で起きます)、脳出血(血管が壊れて出血する状態)が起きます。

2.頭の中で細胞が変化して勝手に増える脳腫瘍。

3.たまたま持ってしまった脳内の血管の奇形、動脈がその壁を瘤(こぶ)の様にしてしまい(動脈瘤と言います)これが少しずつ壊れて行き、その結果くも膜下出血を起こします。これは年齢に関係なくまた後ほど少し触れさせて頂きますが生活習慣病とは直接関係なく起きてきます。

4.原因が未だにはっきりと分っていない変性疾患(遺伝的な要素も含め神経系の細胞が壊れていく状態)、アルツハイマー病(アミロイドという蛋白が溜まり起きるのではと推測されています)、その他パーキンソン病、脊髄と小脳が変形してくる脊髄小脳変性症など遺伝子レベルで現在盛んに研究されている病気が幾つかあります。

分類はともかく日本人において一番問題となり頻度が高い病気は脳卒中です。これは前記の通り動脈硬化から起きます。ここでこの原因につき考えてみます。

日本人は食塩の摂取量が欧米人に比較しかなり多い民族です。食習慣の差でしょうか。1日の食塩の摂取量は12グラムと欧米の人達の1.5倍であるとの統計結果があります。このため高血圧症がかなりの頻度が高いのが現状です。
高血圧の弊害は圧倒的に脳卒中が多く、特に近年の高齢化社会も考慮しますと特に脳梗塞(動脈が詰まる状態)が増加しています。これは以下に述べますが基礎になる重要な病気(病気です、お忘れなく)に対して皆様の健康への認識および我々医療者スタッフの努力不足も関与しているのかもしれません。

ここで現在の我が国で生活習慣(遺伝的要素も有ります)により起こると考えられ皆様も御存知の生活習慣病につき少し触れたいと思います。

生活習慣病(以前では成人病)とは

1.高血圧症…遺伝で起きる事も分ってきていますがやはり食塩(辛い物がすべて食塩ではありません。)の取りすぎ、肥満(直接血圧に影響します)の予防、この二つがもっとも重要で食生活について我々はされによく考え、見直すべきと思います。

2.糖尿病…ある意味でとても厄介な病気です。何故なら殆どが遺伝(親から子供へ)で起こるからです。但し食習慣、つまりカロリーと運動量のアンバランスが大きく影響していることも事実です。運動で痩せる事はかなり大変でしっかりとした医療関係者のアドバイスがなければ難しいと思います。この病気が疑われたら早く最寄りの医療機関を受診して頂き内科医に早く対処してもらうべきと考えます。

3.高脂血症…近年とても重要視されてきています。これまでは心臓病の大きな原因と考えられてきましたが、ごく最近になり脳卒中にも高血圧と同じぐらい関与する事が判明して来ました。この病気も数10パーセントが家族性に起きている事も確認されています。

以上脳血管疾患を中心にまたその原因の概略を述べたつもりです。脳卒中、心筋梗塞など自覚症状が出てから病院に駆け込むのではなく出切れば健康診断などを含め日頃から御自分の健康状態を確認してもらい早めに我々医療機関に訪ねてもらえればと思います。
日本は長寿国とされています。医療費の増加の問題も有るかとは思いますが、なによりクオリティーオブライフ、つまり心身共に健康で皆様が人生を謳歌出来る事を願い医師としてお手伝いが出来ればと考えています。

(神田医師会 亀谷雅洋)

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