平成15年12月号 緑内障について
緑内障は、40歳以上の病気と思われがちです。 眼科医の知識の中では当然ですが、あらゆる年齢の人が罹患する病気です。
何らかの原因で視神経が傷害され視野(見える範囲)が狭くなる病気で、眼圧の上昇がその原因の1つと言われています。
緑内障の眼には、眼圧、視神経乳頭、視野の特徴的変化の少なくとも一つがあります。眼圧を十分に下降させることにより視神経障害の改善あるいは進行を阻止できる、眼の機能的構造的異常を特徴としています。
後頭部が痛い、肩がこる、目頭が重い、目の奥が重い、片目で見えないところがある、症状がないこともあります。
眼圧が上昇してから約3ヶ月くらいしてから視神経に変化が出てきます。
病気の変化として、眼圧→視神経→視野の順番に悪くなります。
つまり、視野が見えなくなるには時間がかかります。
それは、どんな病気でも早期発見、早期治療を行わなければ最終的な事態になります。その最終状態が失明なのです。
失明とは、明かりを失うと書きます。明かりを失わなければ、失明とは言わないわけです。
ところが、この日本語には裏があります。それは、失明には視野の関係が含まれていないからです。
人間の目は、視野の真中でものを見ています。
ある1点を固定して見ているとその周りは見えています。その周りは、ゆがんだりぼんやりと見えます。
何かがあるのがわかりますが、この状態でしっかりものを確認することはできません。
つまり、真ん中は暗く見えない状態になっても明かりはわかります。
この状態は、失明とは表現しないのです。
緑内障は、治療することができます。
ここでの治療は、元に戻す(正常な状態=視野の改善)ではありません。
進行を食い止める治療を行うのです。治療しないと現状よりも進行してしまいます。
緑内障の治療で一番大切なことは、現在の状態を生涯にわたり進行をしないように医師と患者が信頼関係を持ち管理していく事です。
通常の緑内障は、眼圧が高いために眼の神経が痛むと思われています。
しかしこのタイプは、眼圧が正常で(正常範囲は12mmHgから21mmHgの間)視神経が悪くなるのです。1988年と1989年に日本における緑内障に関する疫学調査が行われました。
結果は40歳以上の人で、100人の中で緑内障は3.6人。内訳は、眼圧が高くなるタイプは0.58人で、眼圧の正常な緑内障は2.04人でした。2001年の結果は40歳以上の人で、100人の中で緑内障は5.93人。内訳では、眼圧の高くなるタイプは0.32人で眼圧の正常な緑内障は3.6人でした。
つまり、日本人の緑内障のタイプ中では、眼圧の正常な緑内障が頻度の高いものでした。
眼圧が正常であることから、今まで、通常の緑内障よりも見逃されやすい事がわかりました。つまり、正常眼圧緑内障の発見には、検診での眼圧写真、眼底検査が重要であるといえます。
そのため眼圧が正常でも安心できないというわけです。
通常の健康診断や人間ドックにおいて緑内障を発見する検査として、眼圧検査と眼底検査(眼圧カメラ)です。眼底検査(眼圧カメラ)が行われないところもありますので注意 が必要です。
検診等で行う眼圧検査は、空気眼圧計と言います。多くの眼科・検診施設にあります。これは誤差があり正常な値の眼圧でも、正常範囲外であることがあります。緑内障を管理、診断する医師は、診察の顕微鏡に付属するアプラネーションという眼圧計で測定しています。こちらは、正確な眼圧測定ができます。
眼底カメラでの撮影は、写真なので眼の視神経を見ているのは、2D(平面)の世界となります。実際の視神経は、3D(立体)なので視神経のへこみ(陥凹=かんおう)を見るためには、眼科での精密な診察(立体的な眼底検査)が必要となります。
検診・人間ドック等は、あくまでもスクリーニング(異常や病気の可能性のある状態を指摘する検査)が目的なのです。
自分は、眼が良いから眼科は無関係と考えている方も年に1度は目の診察を受けましょう。
緑内障の発見は、少しでも早い方が目の健康のために良いのです。
(神田医師会 田島康弘)