平成15年6月号 かゆいとは限らない みずむしのおはなし
みずむし(水虫)は白癬菌(はくせんきん)という真菌(しんきん)が足の皮膚に感染することによりおこる皮膚の病気です。食物や風呂場に生える「カビ」も真菌の仲間です。仲間だけあって水虫の白癬菌も高温・多湿になる夏場は活動が活発になります。
白癬菌(白癬菌)は足以外のからだなどに感染すると一般にタムシといわれ、股のところに感染するとインキンタムシといわれます。この他に手や頭皮にも感染しますが、毎日靴をはくために高温・多湿な環境になりやすい足や足の爪に感染し増殖しやすいのです。
足指の間の皮がむけてきたり、ふやけて割れたりする趾間型、小さな水疱(みずぶくれ)ができてくる小水泡型が良く知られています。
この他に足のうらの角質が分厚くなって白くガサガサになる角質増殖型といわれる病型もあり、患者さんがみずむしだと気が付いていないことが多いためガサガサした角質(病原体入り)を室内に落としてしまうことにより感染源になりやすい病型です。
爪のみずむしもあります。爪が厚くなって濁った黄白色調になり、けずるとボロボロともろい感じになっていきます。
かゆくない水虫が多いことが、知られていないようです。
テレビなどのみずむし薬のコマーシャルがカユミを強調しすぎるために、「足がかゆければみずむしである。」「かゆくなければみずむしではない。」こんな間違った常識があるようです。
皮膚科の医師は、かゆいか否かはまったく診断の要素にはしていません。むしろ、みずむしと診断した患者さんの殆どはかゆみを伴ないません。
みずむしは治らないものであると思い込んでいる人が多いようです。
このような風評が根強く残っているのは先に記した「足がかゆければみずむしである。」という間違った常識が大きな原因となっています。
「足がかゆい」⇒「水虫の薬を買ってくる」⇒「本当はみずむしではないので治らない」⇒「みずむしは治せない」
こんな誤解の積み重なりがあるようです。
ある皮膚科医院で「自称みずむし」の患者さんの診断結果の統計を調べたところ、35%の患者さんがみずむしではありませんでした。病気を取違えていれば、治らないのは当然なのです。
現実には最近の薬剤の進歩により、みずむしは非常に治りやすい病気になりました。
まず大事なことは、それがみずむしであるか否かの診断です。
皮膚の表面の角質を出血しない程度にはがして特殊な薬剤で溶かして顕微鏡で検査します。このようにして病原菌である真菌の菌糸の存在を確認できれば確実に診断できます。
診断が確定できれば、足のみずむしやからだのタムシ、インキンタムシは進歩した抗真菌剤(病原菌である糸状菌を殺菌する薬)を塗ることで治療できます。
非常に炎症が強くなってぐちゃぐちゃした状態の場合は短期間抗炎症剤を併用した方が効果的である場合もあります。医師の指示に従ってください。
大事なことは薬の塗り方です。
症状の気になるゆびの間だけ、などに限定せずに足ならば両足全体に薬を塗った方が確実です。
いろいろな研究で一ヶ所から水虫菌が検出された場合には、足のほかの場所にも菌が隠れていることが報告報告されています。
いつまで塗り続けるのでしょうか?足ならば症状がなくなってつるんときれいな皮膚になってからもう1月くらい駄目押しに塗り続ける方がいいようです。
爪のみずむしは薬剤を浸透させるのが難しいために、抗真菌剤を内服した方が確実に治療できます。
1日1回の内服で数ヶ月間を要しますが、毎月血液検査をして副作用の有無をチェックする必要があります。病変が小範囲な場合は上手に削って液体の抗真菌剤で治療できる場合もあります。
みずむしが伝染しやすいのは不特定多数の人々が裸足で歩く場所です。温泉、ゴルフ場の風呂、プールなどです。
これらの場所を裸足で歩いた後にセロテープのように粘着する培地に足を押し付けて調べた研究では高い確率で足の表面にみずむしの菌が付着していることがわかっています。
これが付着したままで靴下をはいてしまうと病原菌が皮膚に入り込んで水虫が完成してしまうのです。
このような場所では足をきれいに拭いてから靴下をはくようにすると感染する確率が少なくなります。
同じように、もしご自分がみずむしの場合には風呂の足拭きマットやサンダル、スリッパなどは家族と共用しないように注意します。
また畳やじゅうたんに自分が落とした水虫菌は半年~1年も存続する可能性があるといわれています。
ていねいに掃除機をかけて、せっかく治療した自分の足に付着しないような注意も必要です。
・足がかゆいのはみずむしとは限らない。
・みずむしはかゆくない場合が多い
・水虫は薬の進歩で治りやすい病気になっている。
・風呂やプールでうつりやすい。
・足を拭いてから靴下をはこう。
(神田医師会 北原東一)