区民の皆様への医療情報

平成15年3月号 お薬と食べ物の話

お薬を飲む時、他のお薬や食べ物の影響はないのかしらと思ったことはありませんか?実はお薬は他のお薬や食べ物と相互に作用することがあるのです。こんなことってちょっと知っていると便利だし安全ですよ。

グレープフルーツと薬

高血圧の薬を飲んでいる方で、このお薬はグレープフルーツと一緒に飲まないで下さいといわれたことはりませんか?高血圧の治療には、カルシウム拮抗剤というお薬が使われることがあります。副作用もなく良いお薬なのですが、不思議なことにはグレープフルーツと一緒に服用すると作用が増強されてしまいます。
これはグレープフルーツに含まれるフラボノイドというものが肝臓でお薬が分解されるのを邪魔することがあるためです。

お薬を飲んだ時、そのお薬はどうやってからだの中へ入ってゆくのでしょう。
飲んだお薬は胃や腸から吸収され、肝臓へ行きます。肝臓では酵素の働きでお薬の一部を少し違う形に変化させます。変化させると効き目のなくなってしまうものもありますし、変化させて始めて効き目が出てくるお薬もありお薬によって色々です。
これを肝臓によって代謝を受けるといいます。これが血液の中へ放出され、病気の部位へ行って作用を発揮するのです。
血液中でもお薬だけでいる場合もありますが、多くはアルブミンという蛋白質とくっ付いています。でもアルブミンとくっ付いているお薬はお薬としての作用がありません。一匹狼で血液中で一人ふんばっているのだけが薬としての作用があるのです。
ちょっと複雑ですがお薬が実際に作用を発揮するのはなかなか大変なのです。

さてある種のカルシウム拮抗剤の降圧剤が肝臓の働きを通してグレープフルーツの影響を受けることがわかったと思います。
血圧がとても高い人はむしろいいかもしれないと思う人がいるかもしれませんが、やはりお薬は慎重にのまれたほうが良いと思いますので、気をつけたほうがよさそうです。

蛋白質とお薬

肉、魚など蛋白質を制限しなければならない人は、これによって腎臓に流れてゆく血液の量が若干減ることがあります。
お薬の中で腎臓から排泄されるようなものは、排泄が悪くなる可能性があるのです。逆から考えると体の中に溜まり易いと言うことになります。
皆さん通風と言う病気をご存知でしょうか?尿酸が高いとかかる病気で、脚の指の関節がものすごく痛くなります。
通風のお薬であるアロプリノールや、高血圧のお薬のインデラール、喘息の人が飲んでいる気管支拡張剤のテオロングは食事で蛋白質制限をしなければならない人では排泄されにくいのです。
お薬は体の中にたくさん溜まりこんでしまうと副作用が出やすいわけですからご用心、ご用心!

お魚とお薬

お魚にはヒスチジンというものが含まれています。
特に鮪や鯖、鰯などの赤身のお魚にはヒスチジンが大量に含まれているといわれます。これがちょっと古くなったりして悪くなっていくと、プロテウスモルガニーという細菌がついてヒスチジンからヒスタミンを作ってしまうのです。
ヒスタミンが多量に体の中に入ると蕁麻疹、発疹、悪心、嘔吐、顔が赤くなる、発汗、動悸、頭痛などの症状が出ます。
また結核の薬でイソニアジットという薬がありますが、これなどはヒスタミンを分解するのを阻害する作用があり、ヒスタミン中毒を起こすことがあり、注意をする必要があります。

飲み物と薬

お薬は水か白湯で飲むことが望ましいのですが、これにはわけがあるのです。
お薬の吸収や作用に影響を持つと思われる飲み物について、少し調べてみましょう。

牛乳

風邪や肺炎の時などに飲む抗生物質のケフレックスやオーグメチン、テラマイシンなどは牛乳と一緒に飲むと吸収が低下します。
また抗がん剤のチガソンや抗真菌薬のグリセオフルビンなどは逆に吸収が増加します。風邪で熱のあるときにせっかくお薬を飲んでも吸収されなければ何にもなりませんし、逆に吸収されすぎてお薬の濃度が高すぎて副作用が出ても困ります。ご用心、ご用心!!

アルコール

まさかお酒やビールでお薬を飲む人はいないと思いますが、アルコールは肝臓でのお薬の分解に大きく関係するので大変重要です。
これはアルコールを飲む人は、肝臓の中のチトクロームP-450という酸素が増えているので、お薬の分解も早くなってしまうのです。せっかく飲んでもすぐに分解されて効かないということになります。
また分解されてできたものが副作用を起こすということもあります。

お茶

タバコはお薬の吸収、代謝に大きな影響のあることがわかっています。
ニコチンも大きな影響がありますが、重要なのは煙による影響です。煙は肝臓でチトクロームP-450に作用します。
タバコの作用は吸う量によっても影響力が異なりますが、多量にタバコを吸う人はやはり大きな影響のあることが考えられますので、いっそうの注意が必要になります。

(神田医師会 小倉明子)

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