平成13年9月号 腰痛の原因はいろいろ
腰痛を訴えて整形外科医を訪れる患者さんはとても多いのですが、その疾患は多様で原因もいろいろです。自分で判断することはやめて、必ず専門医師の診察を受けるようにしましょう。
まず腰痛をきたす疾患を原因から分類してみましょう。
1.椎間板によるもの/椎間板ヘルニア、脊椎管侠窄症へと変更する時に、必ずといっていいほど聞かれます。
2.脊椎の構造上によるもの/脊椎分離症、脊椎辷り症、脊椎管侠窄症
3.加齢と関係あるもの/変型性脊椎症、脊椎骨粗鬆症
4.軟部組織によるもの/筋膜性腰痛症
5.炎症性変化によるもの/脊椎カリエス、化膿性脊椎炎、椎間板炎。
6.外傷によるもの/脊椎圧迫骨折、腰椎捻挫、横突起骨折
7.腫瘍によるもの/脊椎腫瘍、転移性悪性腫瘍
8.内臓性によるもの/内科的疾患、外科的疾患、婦人科的疾患、泌尿器科的疾患
9.心因性によるもの
以上の原因は、単独でおこることもあれば、重複してみられることも多く、確定診断も容易ではありません。したがって腰痛は自分で診断せず、専門の医師の診断を受けて下さい。
(一)腰椎椎間板ヘルニア
20代~30代の男性に多くみられ、腰椎椎間板の髄核が脱出し、そのために神経が圧迫され、腰痛、下肢の痛み(坐骨神経痛)やしびれを発生させます。
原因は変性を起こした椎間板に種々の外力、重量物挙上や前屈強制などが繰り返されることによって生じるといわれています。診断は他覚的な所見と、今日ではMRI(磁気共鳴撮影装置/寝ているだけで検査ができます)による診断が可能です。
治療は、まず保存的療法が主となります。急性期の激しい痛みは、まず安静にし、仰向けに寝ることが困難な時は、膝の下に枕を置き、股関節、膝関節を屈曲し、坐骨神経の緊張をゆるめること。または横向きに休みます。
消炎鎮痛剤の服用、疼痛が激しい時には、腰よりブロック注射(硬膜外ブロック)を併用します。急性期が過ぎれば、牽引療法。外来では間歇的に、入院では持続的に行います。
経過良好となれば、再発予防のためにも、腰筋や背筋を強化する腰痛体操も大切です。コルセットの長期装用は、筋力低下をみますので避けて下さい。
保存的治療により痛みがとれなかったり、繰り返し症状があり、日常生活に支障をきたす場合には、手術により治療します。
最近では、レーザーによる治療も受けられますが、残念ながら保険摘要ではありません。
(二)筋膜性腰痛症
急性期、いわゆるギックリ腰といわれ、重量物の挙上、長時間の中腰などの誘因により、激しい腰痛を起こし歩行困難となりますが、安静により一週間から十日で疼痛は軽快してきます。
(三)変形性脊椎症
四十歳以上の中高年の男子に多く、腰痛は激しくありませんが、体動時に強くなります。下肢のしびれ、疲労感、つっぱりを認めることもあります。 診断は単純X線で、骨棘形成や骨硬化椎間板の狭少化をみとめます。治療は薬物療法、温熱療法、コルセット、体操療法があります。
(四)脊椎管狭窄症
脊髄神経の通り道(脊柱管)が何らかの原因(脊椎辷り症、変形性脊椎症など)で狭窄され、神経を圧迫して症状を起こします。 痛みは激しくありませんが、経過が長くにぶい痛みであり、特徴として短時間の歩行で腰痛、下肢痛が出現し、休むと軽快します。この状態が繰り返しみられます(間歇性跛行)。ただし自転車は疼痛なく乗れます。
診断はMRIが一番よくわかります。治療は薬物療法、つい最近は血管拡張剤などを服用します。保存的に治療しても症状が改善せず、しかも下肢の知覚障害、筋力低下が著明なものは、手術適応となります。
(五)脊椎骨粗鬆症
骨の増加と吸収のバランスがくずれ、骨の吸収が上回り、骨が弱く支持力が減退してくる状態です。中年以降の女性に多くみられることにより、女性ホルモンと関係が深いとされていますが、甲状腺、上皮小体の疾患でも起きます。 骨が脆弱化しているために、重量物を持ち挙げたり、布団につまずき尻もちをつくなどの簡単な外力により脊椎に圧迫骨折を生じ、激しい腰痛のため歩行困難となります。 単純X線では、推体の骨梁の低下を認め、楔状変形(圧迫骨折)がみられます。
治療は安静が効果あり、コルセット、薬物療法としてはビタミンD、K、カルシウム製剤、最近では骨を増し骨折を減らす内服薬もありますが、若い時から食生活を正しく注意し、片寄った食事をやめ、老化にそなえて適度な運動をしましょう。
骨を強くするには・・・・・・・
1.牛乳、乳製品
2.小魚
3.納豆、大豆製品
4.ほうれん草、海藻
5.適度な運動、日光浴
以上、整形外科の外来で日常よくみられる腰痛疾患について述べましたが、腰の病気以外にもさまざまな病気がありますので、くれぐれも自分で判断せず、医師の診断のもとで正しい治療を受けて下さい。
(神田医師会 名倉直秀)