区民の皆様への医療情報

平成13年6月号 近視矯正手術「レーシック」について

最近、この「レーシック(LASIK)」という言葉を耳にすることが増えました。
有名スポーツ選手がこの治療を受けていることもあり、何となく、近視治療の手術であることを知っている人も少なくないと思います。しかし、興味は持っていても「恐そう」「高いのでは?」などの不安があり、敬遠している人が多いのではないのでしょうか。

近視の原理は?

角膜や水晶体の屈折力が強すぎたり、眼軸(眼の長さ)が長いために、遠方を見た時、光が網膜より前で焦点を結んでしまいます。そのため、遠くの物がみえにくくなります。

レーシックってどんな手術?

エキシマレーザーという、熱をほとんど発しないレーザーで、角膜を削り、角膜のカーブを変えることで近視を治します。この治療は、日本では2000年1月に厚生省(現厚生労働省)が認可しています。アメリカでの手術件数は年間約150万件に上っており、日本でも年間約1万件に達すると見られています。

手術方法について簡単に説明しましょう。

まず、マイクロケラトームというカンナのような器具で、角膜の中央部を薄く削り、フラップ(蓋のようなもの)を作ります。
この時、点眼麻酔(麻酔の目薬)をしますので、痛みはほとんどありません。フラップをめくって、レーザーを照射し、角膜の表面のカーブを変えます。フラップを元の位置に戻して、自然に接着させます。手術時間は両眼で約20分ほどです。

術後の痛みはほとんどありません(ごろごろするような違和感や、しみるような感じが稀にあります)。
視力の回復も早く、早ければ数時間後から視力は回復し、翌日に目標の視力が出ることも少なくありません。

手術時間は短く、入院の必要はありませんが、手術後は定期検査を必ず受けて下さい。
なお、手術費用は、現在は健康保険は適用されないので、両眼で50万円ほどかかります。使用している器械やガスが高価なのです。

手術が受けられないことも?

まず、近視が進行する可能性の高い20歳未満の人には、原則として手術は行いません。
また、円錐角膜や白内障、緑内障などの眼の病気がある場合も受けられません。さらに、近視が強ければ強いほど角膜を多く削らなければならないので、近視の度合いが強くて、角膜の厚みが足りない場合は、手術できません。角膜が薄くなりすぎると、眼に悪影響がでる恐れがあるためです。

その他、糖尿病やリウマチ、重度のアトピーなど、手術後の経過に影響があると思われる疾患がある人には、手術は行いません。

どんな手術か十分理解して!

レーシックは眼鏡やコンタクトから解放されたいと望む人にとっては、夢のような治療法かもしれません。実際に手術を受けた患者さんで、そのように感じている方はたくさんいらっしゃいます。

しかし、どんな手術でも100%思い通りの結果がでるとは言えません。術後に「こんなはずではなかった」、「もっと快適に見えると思ったのに……」などの不満を持たれる場合もあると思います。

このようなトラブルを避けるためにも、また、それぞれのライフスタイルに合った快適な視力を得るためにも、術前に医師から十分に説明を聞き、患者さん自身が十分に納得してから手術を受けてください。

老視の方の手術

人は眼の中のレンズ(水晶体)の厚みを変えて、ピントを合わせています。
しかし、年を重ねるに従い、水晶体の厚みを調整する筋肉(毛様体筋)の力が弱くなったり、水晶体が硬くなったりして、ピントを合わせる力が衰えてきます。それが、いわゆる「老視」とか「老眼」と言われる状態なのです。

近視があると、水晶体でも調節しなくても、物を眼に近づければピントが合う状態にできますが、近視を治してしまうと、遠くにピントが合ってしまい、近くは見え難くなってしまいます。
この場合、老眼鏡が必要になりますので、手術しても眼鏡から解放されません。かえって不自由になることもありますので、ご注意ください。

(神田医師会 井上治郎・橋田節子)

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