平成12年12月号 がん予防の十二ヶ条
がんの予防のために、国立がんセンターがまとめた「がんの予防十二ヶ条」は、わかりやすく、日常の生活のなかで実行できる内容になっています。
バランスのとれた栄養とは、蛋白質、脂肪、炭水化物、乳製品などの基礎食品を、毎日適量ずつとることです。偏食をしないでまんべんなく適量食べることがたいせつです。
そうすることによって、発がん性ののある物質を集中的に摂取してしまうことを回避できますし、また発がん抑制効果のある物質をまんべんなく摂取することにもなるわけです。栄養のバランスのよい食生活は、生活習慣病(成人病)の予防にも役立ちます。
好きだからといって毎日同じものばかり食べていると、発がんの原因にもなってしまいます。
たとえばハム、ソーセージ、ベーコン、たらこなどは、強力な発がん物質ニトロソアミンの増加につながります。毎日変化のある食事をすることは、がんになる危険を分散するという意味でもたいせつなことです。
バランスとともにたいせつなことは、食べる量です。
いつも満腹にさせたネズミは食べる量を六十%に制限したネズミと比較すると、発がん率が高いという実験結果が報告されています。
また食べ過ぎのなかでも、特に、脂肪のとり過ぎは、大腸がん、乳がん、卵巣がん、肺がんの原因になるともいわれています。
アルコールはたばこに比べて、発がん発生のリスクはかなり下がりますが、濃いアルコールをストレートで飲むと、食道がんになるといわれています。
これは濃度の高いアルコールが、食道の粘膜を傷つけるためだと考えられています。また蛋白質などの副食をとらずに飲酒を続けたり、たばこを吸いながらの飲酒が肝臓がんや大腸がんになりやすいといわれています。
お酒は副食をとりながら、ほどほどに楽しみたいものです。
喫煙年数が長くても、禁煙を開始すると、肺がん発生のリスクはどんどん減っていきます。
また多く吸う人でも、深く吸いこまない、根元まで吸わない、喫煙後はうがいをするなど日頃の配慮で、ある程度リスクを減らすことができます。
ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは、発がん抑制効果があります。
塩分のとり過ぎは胃がんの原因になります。
また熱い食べ物、飲み物は食道がんになりやすいといわれています。
魚や肉などの焼け焦げのなかには、数種類の発がん物質が発見されています。
魚や肉を焼くと、ヘテロサイクリックアミンという発がん性のある物質が発生します。この物質は調理時間が長くなればなるほど多く発生します。
ピーナッツなどのナッツ類やトウモロコシにつくカビが発生する毒素には、強い発がん性が認められています。
漬け物、しょうゆ、米、みそ、餅などのカビにも発がん物質を産生する物があります。
日光に当たり過ぎると皮膚がんになりやすいといわれています。 日本人は日光を遮断するメラニン色素を多く持っているので、白人に比べて安全です。しかし真っ黒に日焼けするほど肌を焼くのは、避けたほうがよいでしょう。
ストレスと過労が発がんを促進します。ストレスや過労を解消するためには、十分な睡眠と適度なスポーツが有効です。
体を清潔にすることも、がんの予防に役立ちます。
衛生環境のわるい国や地方では、皮膚がんや性器がんが多く発生するといわれています。
(神田医師会 保坂陽一)