平成11年8月号 交通事故死傷者数が増え続けています
総務庁は六月、一九九八年の「交通安全白書」を発表しました。昨年中の交通事故による死傷者数は、前年より三万一干人余り増えて99万9886人となり、「第一次交通戦争」といわれた七十年以来、二十八年ぶりに過去最悪の記録を更新。一方、死者数は9211人(前年比429人減)で三年連続で一万人を下回りました。
交通事故による死傷者数は、七十年の99万7861人をピータにいったん減少に転じ、七七年の60万2156人を底に再ぴ増加傾向が続いています(グラフ)。
昨年は人身事故の発生件数でも六年連統で過去最悪の記録を更新し、80万3878件(前年比2万3479件増)に達しました。
発生件数や死傷者数が増えているのに死者数が減少傾向にある埋由について、総務庁交通安全対策室は「シートベルトをしている場合の死亡率は、していない場合の約八分の一にとどまる。
シートベルトの着用率の向上が大きな原因」としています。
交通事故に遭いやすい、お年寄りと家族に、群馬県警交通部が「危険な行動が見られました」と注意事項などを書いた二色の「いたわりカード」を作り、今月から全家庭に配り始めました。「増え統けるお年寄りの事故に歯止めをかける」のが目的ですが、一部の人からは「危険人物のレッテルを張られるようだ」などとの声もあります。
交差点などで、おまわりさんが、斜め横断や信号無視などをするお年寄りを見かけると、自宅まで訪ねて、一回目は「イエローカード」、二回目以降は赤色の「レッドカード」を家族の方に直接手渡しします。
県警では、一番影響力のある家族に知らせて、意識してお年寄りに接してもらうのが狙い。
「命を落とすくらいなら、家族に注意してもらった方がいい」と話しています。
それについては前橋市社会福祉協議会は「カードで警告すると、家族に責任が生じてしまう。おどろいてお年寄りを家に閉じこめることもあるのではないか」と心配しています。
家族からも、「人は警告されないとわからない。注意はありがたい」と好意的な声が開かれる一方で、「もともと気をつけている。カードを渡されても何ができるだろうか」と疑問の声もあるようです。
東海学園大学の奈良道先生(老人福祉論)は「警察が安全だけを考えて独り歩きすると、ほかの弊害が出る。お年寄りは社会全体で守っていくという流れにあり、むしろドライバー(運転する人)や市民にどれだけ安全を呼ぴかけるかが問われる」と話しています。