平成11年5月号 子どもを事故から守りましょう
五月五日は子どもの日、子どもの健やかな成長を願って定められました。
一方、これからの日本を背負って行く子どもの数が年々滅り続けています。敗戦後間もなくの昭和二十五年、年間二百七十万人あった出生数が、第二次ベビーブームと言われた昭和四十八年でも二百九万人、平成八年には百二十一万人と、昭和二十五年の半分にも達していません。
出生数がこんなにも滅ってしまったのには、いろいろな理由があげられていますが、この少なくなった子どもの数を更に減少ざせるものは、事故と病気です。
今回は、事故から子どもを守るために私たちができることをいくつか集めてみました。
平成九年の人口統計によると、零歳から十四歳の千百九十九人がこれで亡くなっています。
小児事故対策委員会の小児科医・山中龍宏先生は「子どもが死んでしまうはどの事故が一件あればその陰には、入院から家で様子をみる程度まで三十万件近くの事故が起きていると推定される」と言っています。
山中先生によると、命にかかわる事故は、のんではいけないものを間違ってのむ、水におぼれる、やけど、転げ落ちるの四つが多く、特に、のんではいけないものをのんでしまう誤飲が一番多いとのことです。
北里大学病院中毒センターの近藤留美子先生が、病院の小児科にお子さんを連れて診察に来られたお母さん約五百人を調べたところ、四人に一人は子どもが誤飲による中毒を経験していたとのことです。
山中先生によると、子どもの発育の程度を理解すれば、効果的な事故が防げると言っておられます。
寝返りしかできない時期、はいはい・よちよち期、歩く・走る時期で、起こりやすい事故は違う。 一番注意することは、寝返り期には
・ベッドから転げ落ちる。
・はいはい・よちよち期には、やけど、転ぶ。
・しっかり歩けるようになったら、おふろや洗潅機でおぼれないように。
ここで大事なことは、「幼時は昨日できなかったことが、今日できるようになる、先手先手で対策を。」と先生は言っておられます。
ただ、誤飲は、体の発達段階を間わずに起こります。床に小さいものを置かないのが一番確かな予防法です。
目安として、カメラのフィルムケースに入るものは、のみこむ危険性があると思ってよいでしょう。
家の中は家庭によって危険度が違います。
北里大学病院救急救命センタ-で子どもの事故を主に見ている内藤剛彦先生は「四つんばいになって視野に入るものは、全部子どもがさわったり、口に入れたりすると思いましょう。
安全チェックは子どもの目の高さで」と大へんわかりやすい見つけ方を教えています。
・おとなの飲むくすりを、子どもの好きなお菓子の箱やぴんの空いたものに 入れておく
・子どもの見ているところで、それから出してくすりをのむ
危険:おとなのまねをして、中のものをお菓子と思いこんで食べてしまう。
・家の中でたばこを吸う人がいる
・ジュースの空き缶などを灰皿にする
危険:のみものの空き缶に水を入れ灰皿代わりにすると、のみものとかんちがいして飲んでしまう。乾いた吸いがらより毒性が強く要注意。
・子どもの手の届くところに洗剤や殺虫剤がある
・ゴキブリ駆除用にほう酸団子を使って無造作に置いてある
危険:洗剤や殺虫剤がきれいな容器に入っていて、飲んだり、倒して皮膚にかかる。ほう酸団子は一個で致死量になる。
・灯油の給油後、ホースを入れたままにする習慣
危険:灯油は甘いにおいがするので、ホースで吸うことがある。飲んだ時は決して吐かせない。肺に入ると危険性が何十倍にもなる。すぐそのまま病院ヘ。救急車がよい。
・子どもの前でボタン電池の交換をする
危険:食道にひっかかってしまうと、粘膜がやけどをする。
・電気ポットや炊飯器を床に置いてある
危険:わってやけどをしやすい。
・子どもが室内で靴下をはく
危険:子どもは頭が重く、すぐ転ぶ。靴下は転ぴやすい。階段を上っている時に、下から声をかけない。振り返りざま落ちてしまうことがある。
・おふろに残し湯をする
・浴槽と洗い場の高さの差が五十センチ未満
危険:僅かな湯でも一人で入っておぼれる。湯水が残っている時は手の届かない浴室の扉の上の方にカギをかける。ふろふたは弱いと上に乗り、よく落ちておぼれる。
・三歳以下の子どもにピーナッツや節分用の大豆を食べさせる
危険:気管に入り、つまりやすい。固い豆るいは食べさせない。
・食卓に、床に届く長いテーブルクロスをかけている。
危険:クロスを引っ張って、置いてある熱いお茶や汁物をかぶってやけどする。
この文章は一部を『子どもの誤飲・事故を防ぐ本、山中龍宏著、発行三省堂』から参考にさせていただきました。
お子さんをお持ちの方は、是非一冊お手元に置かれることをおすすめします。
又、豊島区池袋保健所では、「子ども事故防止センター」を開設し、体験学習型モデルルームで今年一月から新しい活動を始めています。見学は自由で無料です。どうかご利用ください。