平成10年5月号「少子化と人口減少社会を考える1」(厚生省)から
子供の数がどんどん減って、少子化が進んでいます。
このままいけば10年後には総人口も減り始める社会になります。
1年間に生まれてくる子どもの数は、昭和40年代後半には200万人前後でした。それが今では120万人を割り込むまでに子どもの数が減り続け、少子化が進んでいます。
1人の女性が一生の間に生む子ども数の平均(合計特殊出生率)が2.08人を下回れば、やがては総人口が減少すると言われています。平成8年の合計特殊出生率は1.43人で2.08人を大きく下回っています。
生まれてくる子どもの数が減少し続ける結果、我が国の総人口は2007年を頂点に減少に転じ、その後も減少していく人口減少社会になると予測されています。
2050年には1億人、2100年には6700万人まで減少すると見込まれています。
そして今の出生率が続くと仮定して単純計算をすると、1000年後の人口はほとんどゼロに近付きます。
これから私たちが迎える社会は、総人口の減少と高齢化が同時に訪れる社会です。
我が国では、子どもの数の減少と世界最長寿国となった結果、他の国にも例を見ない早さで急速に高齢化が進んでいます。例えば、65歳以上の人口割合が7%から14%になるのにフランスでは100年以上かかったのに対し、我が国ではわずか24年間で到達しました。
そして、21世紀半ばには国民の約3人に1人が65歳以上という人口減少と高齢化が同時に進行する時代を迎えます。
子どもの数が減少する結果、働いても生活水準の向上に結びつかない社会になることが心配されます。
子ども数の減少傾向がこのまま続いた場合には、経済面の影響として経済成長率は伸び悩む一方で、年金、医療、福祉など高齢化に伴う負担が現役世代に重くのしかかり、場合によっては、働く世代1人当たりの手取り所得が減少する可能性さえあります。
(1)労働力人口の減少と経済成長への影響
労働力人口の減少と年齢構成の変化が労働生産性の上昇を抑制し、経済成長率を低下させる可能性がある。
(2)国民の生活水準への影響
1.高齢化の進展に伴う現役世代の負担の増大少子・高齢化の進展に伴い、年金、医療、福祉等の社会保障の分野において現役世代の負担が増大すると見込まれる。
2.現役世代の手取り所得の低迷人口1人当たり所得の伸びの低下と、いわゆる国民負担率の上昇によって現役世代の税・社会保険料を差し引いた手取り所得は減少に転じる可能性がある、という深刻な状況になる。
子どもの数の減少は、経済だけでなく家族や地域社会にも大きな変化をもたらすと考えられます。
子ども数の減少によって、社会面でも様々な影響が出てくると予想されます。例えば、1人暮らしの高齢者や子どものいない家族の増加など「家族」というものが大きく変化すると考えられます。
また、現在の過疎農山村のような状況が、全国の至るところで見られるようになると考えられます。
高齢化率(65歳以上人口割合)が3割を超える市町村数は現在約1割弱ですが、2025年には約6割もの市町村で高齢化率が3割を超えるという予測もあります。
(1)家族の変容
単身者や子どものいない世帯の増加など、家族の形態が大きく変化するとともに多様化する。単身高齢者の増加は介護その他の社会的扶養の必要性を高める。
(2)子供への影響
子ども数の減少による子ども同士の交流機会の減少や過保護化などにより子どもの社会性が育まれにくくなるなど、子ども自身の健やかな成長への影響が懸念される。
(3)地域社会の変容
広い地域で過疎化・高齢化が進行し、市町村によっては住民に対する基礎的サービスの提供が困難になると懸念される。
男女ともに未婚率が上昇しています。少子化の進行は、この未婚率の上昇が原因です。
男女ともに晩婚化がどんどん進んでいます。例えば、女子の未婚率はこの10年間(昭和60年~平成7年)で25~29歳で3割から5割に、30~34歳で1割から2割に上昇しています。
そして、この未婚率の上昇が、今の少子化をもたらしている原因であると考えられます。
それでは、未婚率の上昇は、なぜ進んでいるのでしょう。仕事と育児の両立に対する負担感や結婚に対する世間の圧力がなくなるなど個人の結婚観や価値観の変化などが考えられます。
未婚率上昇(晩婚化の進行)の要因
(1)育児に対する負担感、仕事との両立に対する負担感
・家庭よりも仕事を優先させることを求める固定的な雇用慣行と企業風土
・根強い固定的な男女の役割分業意識、男性の家事・育児参画が進まない実態
・育児における母親の孤立やそれに伴う孤独感や不安感
・長時間通勤、就業時間に裁量がきかない勤務形態
・働く者の需要に適合した育児サービスが利用しにくいこと
・結婚や子育てを選択することによって継続就業を断念した結果、失うこととなる利益(結婚や子育てにかかる機会費用)の上昇
(2)個人の結婚観、価値観の変化
・女性の家庭外就労が進み、女牲の経済力が向上
・性の自由化、家事サービスが外部化
・老後生活を支える存在としての子どもを持つ意義が低下
・結婚に対する世間のこだわりが減少
・独身生活の魅力が高まった結果、独身の自由を求めるようになったこと
(3)親から自立して結婚生活を営むことへのためらい
自由かつ快適な親との同居生活による親から自立して結婚生活を営むことへのためらい
未婚率が上昇している25~34歳の独身の理由をみると、「適当な相手にめぐり会わない」「必要性を感じない」「自由や気楽さを失いたくない」などが多くなっています。