うつ病というと大変な病気のよう気きがします。
「うつ病にかかった」=「精神病にかかった」とはさすがに思わない時代にはなりました。
それにしても医者から頭痛がしてだるくて心療内科を受診したら医者から「君、うつ病だよ。いやー心のかぜだからね。気をつけて。」などと言われたら、心の風邪といわれても大層な病気に罹った気がします。
うつ病は、普段の「たんなる気分の落ち込み」とはちがうのでしようか。いままでの一生に、一度も落ち込んだことのないという人はいないでしょう。
会社の上司に叱責された、好きだと告白したら友達でいてほしいといわれた、雨降りの日に転んで服が汚れてしまったなどなにかにつけ日常生活は落ち込むことばかりです。
実はうつ病は単なる気分の落ち込みではありません。
身体の病気としての面が大事です。不眠、食欲不良などといった身体の症状が自覚されます。自分はうつ病なんかにかからないと思っていませんか?現実には、うつ病は決して珍しい病気ではなく、むしろとてもポピュラーな病気です。
たとえば、いま100人の人がいるとすると、その中の2〜3人はうつ病にかかっている可能性がありますし、また十数パーセントの人が生涯のうちに一度はうつ病を経験すると言われています。
このように誰もがかかる可能性のあるごく一般的な病気という意味で、最近では「心のかぜ」とも呼ばれています。
誰もがかかる可能性がある、必ず治るという意味で、なかなか上手な喩です。症状は、大きく精神症状と身体症状の2つに分けられます。
まず精神症状ですが、これは(1)抑うつ気分、(2)不安症状、そして(3)意欲の低下と3つの側面をもっています。
さらにもう1つ注意が必要なのは、うつ病でも妄想があり得ることです。
自分は周囲に迷惑をかけている、ものごとがうまくいかないのは自分のせいで自分さえいなければよいと考える(罪業妄想)、取り返しのつかない大事なものを失ってしまって金銭的に破綻するに違いないと考える(貧困妄想)、あるいは自分が重大な病気にかかって治る見込みもないと思いこむ(心気妄想)などはうつ病にみられる典型的な妄想です。
このように妄想まであらわれるうつ病は重症で、周囲から見ると精神病のようにみられたりします。でももちろん精神病ではありません。
身体面の症状もあります。そのうち最も多くみられるのが睡眠障害、つまり不眠症で、うつ病患者の9割以上にみられます。
寝つきの悪さ(入眠困難)、一旦寝ついても途中で何度も目が覚める(中途覚醒)に加え、明け方暗い内に目が覚めてしまい再び寝付けない(早朝覚醒)がうつ病では特徴的です。
睡眠障害に次いで食欲不振、疲れ易さ・倦怠感などもほぼ必発の症状です。
こうした典型的な症状以外にも、便秘・下痢、頭の重い感じや頭痛、めまい、息苦しさ、性欲の減退、女性は月経異常など、さまざまな身体の症状(いわゆる自律神経症状)がみられます。