区民の皆様への医療情報

平成14年9月号 「痔」ってどんな種類があるの

おしりのおはなし

一口におしりの病気といっても、いろいろあります。
このページを読んで、変だなと思ったら一度専門医を受診しましょう。

いぼ痔の症状と治療法を教えて

痔には大きく分けていぼ痔、切れ痔、痔瘻の3種類があります。
その中で一番有名なものはいぼ痔でしょう。いぼ痔は医学用語は痔核といいます。肛門の内部にあるものは内痔核、肛門の外部にあるものは外痔核といいます。痔核とは肛門の奥にある静脈の固まりがこぶ状にふくれた状態になることです。解剖学的に肛門の左側と右後方、右前方の三カ所がよく内痔核ができる場所です。

いぼ痔の症状は、脱肛、出血、痛みなどです。
脱肛は排便するときに力むことによっていぼ痔の静脈がよりふくれ、肛門内部に突き出してしまうことにより、便が排出される際に痔核が肛門の外に押し出される状態をいいます。排便の時にかすかに出てすぐ引っ込むものから、常時出ているものまでいろいろです。
また、いぼ痔の出血はぽたぽた垂れるものからシャーっと勢いよく出るものまであり、ひどい場合はかなりの貧血になることもあります。痛みはいぼ痔自体では少ないのですが、脱肛したまま戻らなくなったり、脱肛する際に裂けてしまったりすると痛みが出ます。

いぼ痔はやや女性に多い病気ですが、中年の男性にもよくみられます。

いぼ痔の原因

1.排便時の力みすぎ

2.長時間の排便習慣

3.肛門に負担のかかる体位(長時間の運転や重い物を持ち上げる等)

4.肛門に刺激のある飲食物(アルコール、香辛料)の取りすぎ

5.便秘や下痢などの排便傷害。

治療法は小さなものは座薬や軟膏で治療しますが、大きい物や出血の著しいものは種ずつが必要となります。
また、いぼ痔には肛門の主に外側に突然にできる硬いいぼ痔もあります。これは肛門の血管の内側の壁が下痢や便秘などが原因で一部断裂して、血管の外壁の間に血の固まりを作ってしまう「血栓性痔核」というものです。症状はいぼ痔の大きさにもよりますが、小さなものは比較的痛みが軽く、大きくなるに従って痛みが強くなる傾向があります。
通常痛みは3~5日で軽くなり、肛門部の違和感のみになる場合が多いので、通常は座薬や軟膏で保存的に治療します。
しかし、痛みが続く場合や出血してしまった場合などは、外来で小さな切開を加えて中の血の固まりを取り除く場合もあります。

切れ痔の症状と治療法を教えて

切れ痔はその名の通り排便する際に肛門が切れてしまう病気で、医学的には「裂肛」といいます。出血はいぼ痔よりも少なく、多くの場合は拭いた時に紙につく程度です。しかし、肛門に傷があるためかなりの痛みを伴い、しばしば排便後も痛みが続きます。
切れ痔の原因は便秘などによる硬い便の場合が多いのですが、普通便や、下利便でも起こります。

若い女性に多い病気ですが、もちろん年齢性別を問わず誰にでも起こりえます。
治療の基本は座薬や軟膏に加えて排便コントロールが必要です。
便秘症の人には緩下剤、下痢症の人には整腸剤や下痢止めを投与します。しかし、中には慢性の切れ痔によって肛門が狭くなっている場合もあります。これは肛門括約筋が慢性の痛み刺激のため柔軟性を失っておこります。そのような場合は外来で肛門全体にかかる麻酔をかけた上で、突っ張っている肛門括約筋繊維を一部切離する手術することもあります。

痔瘻の症状と治療法を教えて

痔瘻はこの病気になったことのない人には一番わかりにくい病気でしょう。
男性に多く、女性の7~8倍で、よくできる部位は肛門の後方(尾てい骨側)です。
痔瘻の原因は肛門から2センチ奥の小さなくぼみにある肛門腺というところに便などがつまって化膿する場合が一番多いのですが、切れ痔や魚の骨などが刺さった場所が化膿して起こることもあります。あな痔ともいわれ肛門の脇にできた穴から膿が出る病気なのですが、この病気は多くの場合まず、肛門の周囲がはれて内部に膿を溜める「肛門周囲膿瘍」という時期と、その破れた穴から膿が出続ける「痔瘻」という時期の2つの病期に分けられます。肛門周囲膿瘍の場合、最初は肛門に軽い痛みを感じるくらいですが、徐々に痛みが強くなり同時に肛門の周囲がはれてきます。
通常は痛みが強くなった時点で肛門科や外科を受診されること多く、外科にて皮膚を切開して中の膿を出す手術をしますが、まれには自然に破れて膿が出る場合もあります。
痛みは膿が出てしまうとほとんどなくなります。

肛門周囲膿瘍は痛みがなくなっても多くの場合そのまま膿が出続けたり、一旦膿が止まっても何度も再発繰り返したりするようになります。この状態を痔瘻といい、肛門の内部から肛門括約筋を通り抜けて皮膚表面まで膿が通る管ができます。放っておくとこの管が枝分かれをして、複雑な痔瘻となる場合もあります。
治療法は外科的手術が必要になります。膿の通る管が皮膚の下の浅いところにある場合は管をすべて切開して解放状態するだけで治癒しますが、括約筋の深いところを通っている場合は切開してしまうと括約筋の機能が障害を受け、便が漏れる場合もあるので、肛門括約筋温存手術が必要となります。

そのほかのおしりの病気も教えて

もちろん、肛門の病気はまだまだいろいろあります。
痔だと思って放っておいたら実は癌だった場合やクローン病(難病指定の病気です)だった場合もありますので、出血が続いたり、違和感が続いたりした場合は思い切って専門医を受診してみてください。

(神田医師会 林久太佳)

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