最近では、いびきが睡眠時無呼吸症候群の一つ、「OSAS閉塞型睡眠時無呼吸症候群」の前段階であるとの認識が高まっています。
大きないびきや、呼吸のリズムが不規則なもの、数秒間呼吸が止まってしまうものは病的です。OSASでは、昼間の強い眠気、頭痛、不機嫌、目覚めの悪さ、集中力の低下などが自覚されます。
また、呼吸機能が低下することで、心臓、内分泌系、血管系の臓器に負担がかかり、生命にかかわる悪影響すら引き起こされることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の診断基準は「七時間の睡眠中に10秒以上続く無呼吸が30回以上みられるもの、もしくは一時間あたり五回以上認められる場合」です。
無呼吸があって、眠気、頭痛など前述の自覚症状があれば、医師に相談した方がよいでしょう。診察の結果、必要な場合は、特殊なモニターを装着するポリソムノグラフィーという睡眠中の検査を行います。通常入院して行う検査ですが、最近では家庭に持ち帰って測定できる簡易型の機械もあります。
いびきは睡眠中に鼻・ノドの空間が狭くなるために生じる訳ですから、この狭くなる原因を取り除けばよいのです。それには、自分でできる工夫と、医師に相談すべき方法があります。
いびきのひどい人は、アルコールの摂取を控えめにしてください。
睡眠時、仰向けに寝るといびきをかきやすいので、横向きに寝る習慣をつけましょう。具体的には、寝巻きの背中にテニスボールなどを縫いつけたり、敷き布団の下に座布団を入れて、片側に段差をつけます。
尾翼に張り付けて鼻腔を広げるバネ状のテープも、効果があると報告されています。
鼻は通っているのに、睡眠時の開口が癖になっているときは、口呼吸の癖を直します。これには、上下の唇を一本の粘着テープで軽く固定して、口呼吸を鼻呼吸へ矯正する方法がありますが、口唇炎や皮膚のタダレを起こしたり、呼吸が苦しくなることがあるので、医師の指導を受けてから実行してください。
特殊なマウスピースを就寝時に使用したり、睡眠時無呼吸があるとき、睡眠中の呼吸を補助する機械を装着する方法もあり、自宅で使用できます。
睡眠薬や鎮静剤を使用していていびきがひどい人は、主治医に相談しましょう。
原因が全身的なもの、得に肥満や慢性運動不足では、生活習慣病を防ぐ意味でも、食事療法や運動療法などの生活指導を、医師から受けてください。適度な運動は減量に至らなくても、睡眠中における呼吸補助筋の緊張低下を防ぎ、いびきを軽減すると言われています。
鼻やノドの病気が原因の場合は、その病気を治療しますが、場合によっては手術が必要です。
小児で多いのは「アデノイド切除術」「口蓋扁桃摘出術」です。鼻呼吸ができなかったり、高いいびきをかく、呼吸が途中で止まる場合があるときなどは、この手術の適応になる事があります。
成人では、腫れている鼻粘膜の一部を切除したり、鼻のまがりを治して、鼻腔の通りをよくする「鼻内形態矯正手術」やノドの余分な粘膜をとり除き、ノドの空間を広くする「咽頭形成術」「口蓋垂軟口蓋咽頭形成術」「喉頭蓋手術」などがあります。
大きないびきは熟睡の証拠ではなく、むしろ注意信号であることがお分かりいただけたかと思います。ひどいいびきは治療が必要です。専門の医師の診察を受けてみましょう。
(神田医師会 丸山 毅)