私は現在、献血の検診医をしているが、献血ルームに来てくれる若い人たちに血液検査の数値の異常が目立ち、大変驚いている。
最も多い異常は潜在的鉄欠乏を示す平均赤血球容積(MCV)の値が低いことである。一九九四年改討の内科学書にはMCV89から99までが正常範囲とあり、健康だと自覚している人の95%は本来この範囲に入っている。
しかし私がここ半年で検診したのべ約1300人のうちMCV89未満の人が約六割、85未満が約二割いる。敵血に訪れるのは十代後半〜三十代が多い。四十代以降では異常の比率は低いので若い世代に限ればさらに異常率は高まるだろう。
85末満は潜在的鉄欠乏とみて間違いないというのが血液専門医の話である。鉄欠乏は貧血の最も多い原因だが、MCVの異常の程度と頻度に大きな男女差は見られない。男牲では幸いMCV85未満でも貧血に至っている人はまれだが、女性ではその約三割が貧血というのが私の得た結論である。
そして貧血の若い女性に問診してみると、ほとんどの場合、月経過多あるいは生理があまり来ないという答えで、子宮内膜症や栄養障害による卵巣機能の異常が疑われる。MCVの異常以外でも、男性では二十歳前後から肥満、高血圧、脂肪肝が見られ、また男女を問わず若い層から高脂血症もかなりある。
このような現実に私は危機感を覚え、自宅近くのコンビニで若者たちの食品の買い方に注目してみた。するとカップめんと菓子パンだけ、清涼飲料水と菓子パンだけ、おにぎりとアイスクリームといったぐあいに、各種栄養素の必要量やバランスが全く頭にないとみえる場合がほとんどであった。