結核は世界で増え続け、皆さんご存知のように国内では集団感染が多発しています。
これほど古今東西にわたって研究されている病気はあまりありません。
しかし今でもまだその発病や再発についての仕組みをはじめ、よくわからない問題も多く、「結核の正体は?」という質問に簡単には答えられないのが実情です。
日本では、昭和四十年代になって新しく発生する患者数も激滅し、「結核は、もう過去の病気と言ってよいのではないか」とさえささやかれた時期もありました。
ところが、その後の世界での患者数の増加の勢いから、全くそうでないことがはっきりしてきたのです。かつては根絶も期待された一つの病気が、今、恐るべき強敵として私達の前に立ちはだかっています。
世界保健機構(WH0)では、世界中の結核患者が増え続けていることに大きな危機感を持ち、結核非常事態宣言を出して、対策の強化を呼びかけました。その時の言葉が
「ただ戻つただけではない。今が最悪なのだ。」
です。 表1のように、世界の結核は増え統けています。
1995年 | 2000年 | 2005年 | |
総数 | 876.8 | 1022.2 | 1187.5 |
先進国 | 20.4 | 21.1 | 21.7 |
アジア | 554.4 | 620.7 | 692.3 |
アフリカ | 146.7 | 207.9 | 284.9 |
その他 | 155.3 | 172.5 | 188.6 |
(WHOによる)
天然疽はその激しく特徴的な病像、強い伝染力、急性の経過などのために誰でも強く警戒しました。その上、種痘は極めて有効です。
これに対し、結核の症状は咳、発熱など特徴がなく、慢性の経過を取るので、感染は勿論、発病しても長い間誰も気づきません。
BCGは種痘ほど有効ではありません。しかも一度患染すると10年、20年無事でも、その後になって発病することもあります。天然疽のように一挙に根絶する方法は残念ながら今はないのです。